2024年、沖縄の美しい海に異変が起きています。サンゴの大規模な白化現象が観測され、海の生態系に深刻な影響が心配されています。
白化の現状
日本自然保護協会(NACS-J)の調査によると、2024年の沖縄沿岸部では広範囲にわたるサンゴの白化が確認されました1。
- 辺野古沖:浅場で66.7%、深場で41.7%のサンゴが白化
- 大浦湾チリビシ:ミドリイシ群集の83.3%が白化
- 浦添市パルコシティ前:約80%のサンゴが白化
さらに、世界的にも深刻な状況で、8月末時点で世界のサンゴ礁の75%が影響を受けているとのことです。(NACS-J)
2024年8月現在の珊瑚の様子(OKINAWA NEWS by QAB)
白化の原因
2024年の沖縄のサンゴの白化は、台風の上陸が少なかったことが間接的に影響している可能性はありますが、それだけが主な原因ではなく、海水温の上昇を中心とした複合的な環境ストレスによるものと考えられます。
1. 海水温の上昇
最も重要な要因とされています。サンゴの生存に適した水温は25〜28°Cで、30°Cを超える状態が長期間続くと白化が起こりやすくなります。地球規模の気候変動による海水温の上昇が、大規模な白化現象の主要因となっています。琉球大学の調査によると、沖縄本島北部の本部町では、水温が30.3度と高く、水深2メートルから4メートルの浅瀬に広がるほとんどのサンゴが白化していることが確認されました。(NHKNEWS)
2. 強い光と紫外線
過度の光や紫外線にさらされることで、サンゴにストレスがかかり、白化を引き起こす可能性があります。
3. 塩分濃度の変化
大雨や河川からの淡水流入により、海水の塩分濃度が急激に低下すると、サンゴにストレスを与え、白化の原因となることがあります。
4. 土砂や汚染物質の流入
陸地からの赤土等の土砂流出や汚染物質の流入は、海水を濁らせ、サンゴの光合成を阻害します。また、サンゴの表面に堆積することで窒息させる可能性もあります。
5. 化学物質の影響
日焼け止めクリームに含まれる化学物質など、人為的に海に持ち込まれる物質がサンゴにストレスを与える可能性があります。これらの要因が単独または複合的に作用し、サンゴと共生関係にある褐虫藻のバランスを崩すことで白化が引き起こされます。褐虫藻がサンゴから抜け出すと、サンゴの骨格が透けて白く見える状態になります。長期的な気候変動の影響により、高水温による広範囲の白化が頻繁に確認されるようになっており、地球規模での対策が求められています。また、局所的な環境ストレスを軽減するための取り組み(例:赤土対策)も、サンゴの回復力を高める上で重要です。
影響と懸念
サンゴの白化現象がもたらす影響と懸念は、海洋生態系全体に及ぶ広範囲で深刻な問題です。以下に主な影響と懸念を詳しく説明します。
生物多様性の喪失
サンゴ礁は海洋生物の約25%が生息する「海の熱帯雨林」と呼ばれる生物多様性の宝庫です2。サンゴの白化と死滅は、この豊かな生態系に甚大な影響を与えます。
- 魚類の減少:サンゴ礁に依存する魚類の生息地が失われ、個体数が激減します。オーストラリアのグレートバリアリーフでは、2016年の大規模な白化後、一部の魚種の個体数が最大40%減少したという報告があります2。
- 絶滅危惧種への影響:クマノミなどのサンゴ礁に特化した生物種が生存の危機にさらされています3。
食物連鎖の崩壊
サンゴ礁に依存する生物が減少することで、それらを捕食する大型魚や海鳥などにも影響が及び、海洋生態系全体のバランスが崩れる可能性があります2。
経済的影響
サンゴ礁の喪失は、地域経済にも深刻な影響を与えます。
沿岸防護機能の低下
健全なサンゴ礁は自然の防波堤として島を波浪から守る働きがあります4。サンゴ礁の喪失は、沿岸地域の防災機能を低下させ、海岸侵食や高潮被害のリスクを高める可能性があります。
医薬品開発への影響
サンゴ礁の生物多様性は、新たな医薬品開発の可能性を秘めています。サンゴ礁の喪失は、未知の医薬品候補物質の発見機会を失うことにつながります4。
長期的な回復の困難さ
サンゴは一度大規模な白化を経験すると、完全な回復には長い時間を要します。気候変動により白化現象の頻度が増加すると、サンゴが十分に回復する前に次の白化に見舞われる可能性があり、長期的な生態系の回復がますます困難になります3。これらの影響は相互に関連しており、サンゴ礁の喪失が引き起こす連鎖反応は、海洋生態系全体の健全性を脅かす深刻な問題となっています。
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